下水道用マンホール蓋(JIS)の抜本改正
マンホール蓋の国家規格であるJIS A 5506が2018年12月20日に23年ぶりに抜本的に改正されました。今回のJIS規格は、マンホール蓋の選定から維持管理までを含むPDCAサイクルを捉えた内容で記載されており、現段階のマンホール蓋の最新知見が凝縮された一冊と評価されておりますので、マンホール蓋に関する課題解決の中でご活用ください。改正の趣旨と構成ごとの主なポイントを下記に示します。
改正の趣旨
下水道用マンホール蓋(JIS A 5506)は1958年(昭和33年)に制定され、これまで道路の観点で複数回改正されていましたが、管路の観点では改正されていませんでした。近年の気象環境の変化と社会的要求や技術の進化に沿って、頻発している集中豪雨に対する安全性の普及促進を図る目的で改正されたものです。
関連する規格として(公社)日本下水道協会が示す下水道用鋳鉄製マンホールふた(JSWAS G-4)があり、今回のJIS規格改正により、マンホール蓋に必要な基本性能はほぼ同等の内容となりましたが、JIS規格にはマンホール蓋に必要な基本性能のみならず、実際の使用における安全性と使用性の長期維持を促すために「マンホール蓋の施工」、「設置環境に応じたマンホール蓋の選定」、「維持管理に関する要領」が附属書として示されていることが大きな特徴です。
規格
規格本文には、蓋の内圧安全性として「蓋の圧力開放耐揚圧性」と「転落防止性」が規定されています。
「蓋の圧力開放耐揚圧性」は、マンホール蓋のかん合力を超えるマンホール内圧発生時に、マンホール蓋を一定高さ以下で浮上させ、内圧を解放させる性能として記載されています。
(今回の改正で G-4規格にも規定されている「蓋の圧力開放耐揚圧性」と「転落防止性」が「内圧安全性」として定義されました)
※[JIS A 5506 :2018 解説 5.1.7.1]より引用
付属書A(規定):転落防止装置及びその性能試験
マンホール内圧からの空気圧や水圧等により、仮にマンホール蓋が開放しても転落防止装置が枠から離脱や破損を生じないように耐揚圧荷重強さと、人が載っても破損しないための耐荷重強さが記載されています。
(この内容はG-4規格と同内容です)
※[JIS A 5506 :2018 解説 5.2.1]より引用
付属書B(参考):マンホール蓋の施工要領
マンホール蓋を起因とした事故・不具合を防止するには、マンホール蓋を適切に施工することが重要として、枠固定ナットの締めすぎによる枠の変形を防止する高さ調整部材、枠と上部壁の隙間を埋める無収縮流動性モルタル、マンホール内圧が発生した際の枠の飛散を防止するため、あと施工アンカーは必要な強度をもつものを使用すること等が記載されています。
(あと施工アンカーの内容はG-4規格には明記されていませんが重要な内容です)
※[JIS A 5506 :2018 付属書B – c)あと施工アンカー -]より引用
付属書C(参考):マンホール蓋の設置要領
マンホール蓋の設置及び取替えを行う場合は、それぞれの設置環境の要求に適したマンホール蓋の種類を選定することが、安全性及び耐久性の確保のためには重要です。マンホール蓋は、様々な設置環境及び特殊用途に対応できる性能をもつ種類もあり、設置環境ごとに使い分けることが望ましいとして、以下のような設定例が記載されています。
(この内容はG-4規格に明記されていませんが重要な内容です)
※[JIS A 5506 :2018 付属書C]より引用
付属書D(参考):マンホール蓋の維持管理要領
マンホール蓋は、下水道管路施設の中でも唯一道路上に設置され、管路の一部、道路の一部としての性能・機能を併せもつことが求められる重要な施設であり、管路施設を一体的に捉え、的確な維持管理が必要と記載されています。
この中で、下水道台帳に情報がないマンホール蓋の基本情報の確認項目と、マンホール蓋変遷表を活用した効率的な確認方法が記載されています。また、マンホール蓋の状態把握手法としての巡視、点検、調査それぞれの確認項目と判定基準の設定例や、設置環境を踏まえたマンホール蓋の維持管理頻度の設定例が記載されています。
(この内容はG-4規格に明記されていませんが重要な内容です)
a.維持管理に必要な基本情報
マンホール蓋は、下水道台帳に属性情報が記載されていないことがほとんどですが、近年の大型車両の通過による損傷劣化等や豪雨時のマンホール内圧上昇に起因するマンホール蓋の飛散対策として、道路工事に伴い管きょより早く改築されているものもあり、設置環境ごとにマンホール蓋の仕様を把握することは困難です。
よって、マンホール蓋の適切な維持管理を行うために、基本情報として道路情報、管路施設情報、設置年、マンホール蓋タイプ等の把握が重要となります。マンホール蓋タイプについては、既設マンホール蓋の仕様及び、性能を取り纏めたマンホール蓋変遷表を活用することで、効率的な情報収集や仕様を基準にした大まかな優先度の見取りが容易になります。
※[JIS A 5506 :2018 解説 5.2.4]より引用
b.維持管理頻度
マンホール蓋の維持管理頻度は、管きょ・マンホール本体などと同期化した上で設定することが望ましいのですが、マンホール蓋は管路施設の中では唯一道路上に設置されており、他の管路施設と比較すると性能劣化の進行が早いため、設置環境によっては、マンホール蓋単独での維持管理が必要となります。
※[JIS A 5506 :2018 付属書 -D.5 維持管理頻度-]より引用