生産性

productivity

軽量化によりもたらされた生産性の向上

JSWAS G-4が制定されたことにより、グラウンドマンホールは従来の重量(約160㎏)の半分に軽量化され、マンホール蓋の厚みも薄くなりました。
この軽量化によりグラウンドマンホールの施工の負荷軽減や輸送効率のメリットがもたらされました。

軽量化を可能にした材質の進化

この軽量化が可能となった要因は、従来多く使われていた材質であるFC(ねずみ鋳鉄)から、薄肉軽量で粘性があり、強度に優れた球状黒鉛鋳鉄=FCD(ダクタイル鋳鉄)がグラウンドマンホールにも使われるように開発されたことがあげられます。 FC(ねずみ鋳鉄)と球状黒鉛鋳鉄FCD(ダクタイル鋳鉄)を比較すると、FC(ねずみ鋳鉄)に含まれる黒鉛は線(片)状の組織であり、力が加わると線(片)状を通じて力が組織内を伝わり、割れやすい性質を持っているのに対し、ダクタイル鋳鉄は組織中の黒鉛を球状に独立させることで、外力が組織内に伝わりにくくしているため、引張り強さ・伸びなどに優れ、普通鋳鉄よりも数倍の強度を持ち、粘強さ(靭性)に優れた材質です。そのため、グラウンドマンホールをおよそ50%軽量化しても従来以上の強度を発揮できるようになりました。

※水道管に使われるダクタイル鋳鉄は伸びが大きいため、グラウンドマンホールに変形を生じる可能性があることなどから、変形防止とともに耐摩耗性や、耐腐食の強度を増す合金ダクタイル鋳鉄(鉄蓋専用材質)が昭和40年に開発されました。

写真提供:日本ダクタイル鉄管協会

施工の変化による効率化(無収縮モルタル施工)

グラウンドマンホールは道路上の過酷な環境下でも期待される機能を発揮させるため、より堅牢で安定した品質での施工が求められていました。
また、受枠とマンホール本体を結合する際に従来使用していた普通モルタル施工はセメントが硬化し道路を解放するまでに約24時間を要したため、施工性を含めて作業スピードの向上も求められていました。
そのような背景から高流動性で硬化時間が短く、圧縮強度に優れた無収縮流動性モルタルを使った施工へと変化していきました。

無収縮モルタル施工の特徴

・超早強のため、硬化時間が短い
・普通セメントモルタルのような硬化後の収縮がない
・夏季は約1.5時間、冬期は約1.5~3時間で道路開放可能

無収縮モルタル施工の様子

特に道路開放が可能となるまでの硬化時間は普通モルタル施工では約24時間を要したのに対し、無収縮モルタルでは夏期は約1.5時間、冬季は約1.5∼3時間となり最大22.5時間(1か所あたり)の時間短縮となりました

削減コストの試算(施工費)

FC製(呼び径600)の設置工事費用(「下水道用設計標準歩掛表」の蓋及び調整コンクリートブロック据付工歩掛表を基に算出)ではグラウンドマンホール1か所あたりの設置工事として約8,000円の金額が設定されています。
それに対して、JSWAS G-4におけるFCD製(呼び径600)の設置工事費用(JGMA「グラウンドマンホール設置歩掛」を基に算出)では1か所あたり約2,000円と設定されており、比較すると軽量化による設置工事の負担軽減・効率化による生産性向上により、およそ6,000円の施工費削減となっていることが分かります。

削減コストの試算(輸送費)

グラウンドマンホールの軽量化により輸送コストも変化しました。
ここではモデルケースでの算定を行い、[4tトラック]が[160㎏(FC製)、80㎏(FCD製)]それぞれの重量のグラウンドマンホールを65%(2,600㎏)の積載率で運んだ際の輸送コストを比較しました。

輸送コスト

蓋+枠=160㎏(FC製)の場合
160㎏/2,600㎏ = 16 基積載可能
        ・・・1基あたり約 2,100円
蓋+枠=80㎏(FCD製)の場合 ※JSWAS G-4改正以降
80㎏/2,600㎏ = 32 基積載可能
        ・・・1基あたり約 1,000円
※配送コストは各メーカー、工場、物流の所在地、混載する製品等により大きく異なります。

想定される経済効果

上記の試算によると、グラウンドマンホールの軽量化により、JSWAS G-4制定前と比べ、1基あたり施工費約6,000円、輸送費約1,100円のコスト削減効果があったと想定されます。
JSWAS G-4が制定された1997年(平成9年)から2019年(平成31年)までに設置されたグラウンドマンホールはおよそ525万基のため、およそ372億円の経済的効果があったと算定できます。

※数値の算出はすべて(一社)グラウンドマンホール工業会調べです。

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